プラスチック微細成形・微細加工

プラスチック微細成形への取組み

木材、金属・ガラスといった素材は長い歴史を持っています。これに比べるとプラスチックはセルロイドの誕生から150年程の歴史しかない比較的新しい素材です。プラスチック製品は広く普及し日常生活に欠かせないものになっていますが、素材としてのプラスチックは技術革新余地があり、現在では高機能化が進み金属など従来の素材の分野を置き換える動きが活発化しています。
樹脂素材は、量産性やコスト面、成形性などで従来素材に比べて大きなアドバンテージがありますが、この高度化は耐熱性、耐薬品、放熱性、電気特性などの面で著しい進展を見せており、塗装レス化、バイオマスプラ、生分解性プラスチックを用いた脱化石燃料化など、素材の垣根を超える用途での活用が進み、プラスチックの可能性を広げています。
当社はこうしたプラスチックのポテンシャルの拡大への取組として、成形製法のアプローチから、従来プラスチックでは活用されなかった微細なプラスチック加工に挑戦しています。

微細加工を実現するテクノロジー

成形加工においては、おおよそ100μm未満の加工を行う場合に微細加工と呼ばれています。
樹脂や金属はその特性上、温度変化によって膨張・収縮します。このため、加工寸法・精度の安定性のためには、一定の温度制御下で行う必要があり、そうでないと季節や時刻の温度変化による寸法変化が避けられません。例えば金属加工の場合には切削条件やクーラントの管理はもちろん、微細加工機を恒温室に設置するなどの対策が必要になります。
プラスチック微細成形加工に使用する金型は、恒温室内に設置された加工機を使って製作されます。 微細加工ができる機械を微細加工機と呼び、温度変化による加工寸法・精度の狂いを回避するためには、専用の機械を使用する必要があります。このように、金型や樹脂における微細加工は、設備や施設環境の工夫が必要になりますが、当社はそこに長年の経験とノウハウで築き上げた成形技術をプラスすることで微細成形を実現しています。

微細成形加工の内容

当社は微細加工金型と独自の成形技術を使うことで、微細構造の成形品への転写を実現しています。この微細精度はミクロンレベル、ナノレベルに達しており、これにより、従来は金属やガラス・シリコンなどが使用されていた分野でのプラスチックの活用が実現しています。

<MNの拡大写真>

<マイクロ流路の写真>

微細成形加工のソリューション

プラスチック射出成形の生産技術の進展の結果、量産性と低コスト化はプラスチック射出成形の大きな特徴となりました。
これに微細な加工が加わり、医療、美容、化学等のあらゆる分野において検討が進んでいます。
今後も超微細加工とそれを忠実にプラスチックに転写できる技術革新が、各方面から求められています。

①医療機器への展開

医療分野については、遺伝子、ウィルス検査プレート、理科化学分野ではラボオンチップ(マイクロ流路)などが挙げられます。
プラスチックプレートに微細な加工を施すことにより、低コストで大量生産が可能なマイクロ流路が実現できます。
特に、プラスチック製マイクロニードルはプラスチック微細成形加工により大きな可能性を秘めています。
マイクロニードルは美容分野のみならず、医療分野における皮内注射の可能性にむけた開発が行われており、
ヒアルロン酸や従来の金属針が先行していますが、プラスチックは新たな選択肢になります。

②低反射テクスチャー転写

微細成形の特徴としては、微細加工金型の高転写性が挙げられます。
当社の微細成形技術により、更に精度の高い転写が実現します。
例えばプラスチック表面への低反射テクスチャー転写はその特徴の一つです。
これにより、プラスチック表面に低反射機能を付与することができます。

③美観性(ピアノブラック)
④撥水性機能

液体がはじくという現象は、液滴の表面張力(水72.75mN/m)が、対象となる固相の表面張力より著しく大きい場合に発生します。
液体の表面張力>対象個体の表面張力

・成形材料:ポリプロピレン/住友ノーブレンW101
・使用測定器:接触角計(協和界面科学社製DM-501)

一般成形品(撥水パターンなし/鏡面)

・液滴量:6.4μL
・動的滑落角:90°以上

一般成形品(撥水パターンあり)

・液滴量:6.4μL
・動的滑落角:14〜18°
・接触角:137°(高撥水)

微細成形加工品(撥水パターンあり)

・液滴量:6.9μL
・動的滑落角:4°以下
・接触角:150°以上(超撥水)